ハートバリアフリーを創りたい
~株式会社正和工業~
第1話:「汗と涙の学生時代」
大阪府八尾市。吉本 英哲(よしもと えいてつ)は、学生でありながら、正和工業の出向社員として働いていた。
吉本が19歳のとき、父が他界。鉄鋼業を営む正和工業を母が引き継いだが、現場では吉本の手伝いが欠かせなかった。
吉本:「自分が働かないと、会社がなくなってしまう。現場をしっかり切り盛りして、大学も何としても卒業するぞ!」
吉本は、サークル活動や楽なアルバイトをして過ごしている周りの学生とは、目の輝きが違った。
頑張りの甲斐あって、見事大学を卒業。吉本は、もらったばかりの卒業証書を握りしめ、父の墓前でますます事業に打ち込むことを誓った。
第2話:「父の遺志を継いで」
学生のころから現場で身につけたエレベーターや昇降機の技術は、同世代の技術者の中では群を抜いていた。評判を聞きつけた取引先から、次々と仕事が舞い込むようになる。
エレベーターの技術者は、専門職。さらに技術を磨いて、関連する資格を取得。創業の機運は満ちた。
2000年4月、吉本は会社設立を果たす。
吉本:「社名は、株式会社正和工業とします。父が付けた大切な名前です。僕の得意な技術で、この会社をさらに大きくしたいんです。」
ある現場で、小学校の階段昇降機の据え付け工事を請け負った。
「この機械のあるなしで、車いすの子供が学校に通えるかどうか、判断されてしまうのか…」吉本は、虚しさと少しの怒りを感じた。
第3話:「ライファクト(Life act)の始まり」
創業後、順調に事業を運営していた吉本のもとに、バリアフリーの案件の相談が相次ぐようになった。
特定のメーカーの下請けではなく、中立的に機種を選定できることにメリットを感じてもうことができたからだ。
車いすのメーカーや階段昇降機、椅子式のメーカーなどともつながりがあるため、幅広いラインナップからさまざまな提案を生み出した。
車いすユーザー:「これまでは介助が必要だったところに自力で上ることができるようになりました。目の前に自由が広がった気分です。なんと感謝したらいいか分かりません」
吉本:「僕の仕事がこんなに役に立ったなんて。励みになります!」
吉本はバリアフリー事業を経営の中心に据えることを決意する。
社員と話し合いを重ね、「ライファクト(Life act)」という企業理念を打ち出した。
第4話:「挑戦と成長」
吉本は、自分の代わりになるような人になるように役職を与え、抜擢をすることで社員が育つ社風をつくろうとしていた。
設計部長:「社長、この部分は昇降機を付けずにスロープにしたほうが、建築の自由度が高まるのではないでしょうか?ビル建築のコスト削減にも貢献できると思います」
吉本:「スロープの案、とてもいいじゃないか。ここの建設会社とは仕事を紹介し合っている仲だ。紹介してもらった仕事をうちが受け持つこともある。長期的な利益を考えられるようになれば、君も経営者の一員と言えるね」
別の社員は、自社の社屋にグリーンカーテンをしてヒョウタンを育てる提案を持ってきた。
地域で話題づくりをして、エコ活動などのイベント参加へのきっかけづくりに取り組もうというのだ。
正和工業は、全員参加の経営で社会の課題解決に取り組んでいく。
次回予告:「心の垣根を取り除く」
吉本が現在構想しているチャレンジは、子どもたちが体や精神の不自由を原因に諦めない遊び場を作ること。たくさんの子どもが喜んで遊ぶ姿を想像しながら、吉本はまちづくりの先頭に立つ―—。
企業理念
ライファクト(Life act)~すべての人が生き生きと暮らせる社会をつくる~
企業のビジョン
障碍のあるなしにかかわらずすべての人が生きやすいために体の不自由や精神の不自由を原因に諦めない社会をつくるためにハード面でもソフト面でもハートバリアフリーを創る
Info基本情報
社名 | 株式会社正和工業 |
業種 | 1.建築工事業、土木工事業 2.昇降機、ホームエレベーター、椅子式階段昇降機、車いす用階段昇降機、段差解消機、スロープ、手すりなどの開発、設計、製造、販売など |
創業年月日 | 2000年4月1日 |
代表者氏名 | 吉本 英哲 |
本社所在地 | 大阪府八尾市中田3-53-24 |
資本金 | 500万円 |
社員数 | 社員3人 |
会社HP | https://syowakogyo.jp/ |
Info代表者経歴
鉄鋼業を営む会社を経営していた父親が19歳で他界。返済をしないと会社がなくなるということで母親が事業を継ぐ。
自身は学生であったため正和工業の出向社員として返済を手伝っていた。大阪商業大学を卒業後、入社し屋号を継ぐ。
編集後記
自らの経験を糧に、周りの人々へ貢献しようとするその揺るぎない姿勢。それは、損得勘定を超えた、真のリーダーシップの輝きです。混迷の時代を迎える今だからこそ、吉本社長のような、他者のために尽力するリーダーの存在は、私たちにとって一筋の光となるでしょう。きっと、その温かい leadership の下、業界のみならず、地域社会全体が、希望に満ちた未来へと力強く歩み始めるに違いありません。
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